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下川町のいろんなことを知ってみよう!

#2 くらしごとツアー ~自然と共にある暮らし~

前回の記事はこちら

下川町へやってきたわたしたち大学生5人。1日目は木を切り出す現場から、丸太が角材へ加工される工場まで、林業の根幹のような場面を見てきました。

山に携わるみなさんのプロ意識や木に対する姿勢、下川町の歴史や自然に対する誇り、そしてそれらを守っていきたいという気持ち。色々な方が、言葉や姿勢で教えてくれました。

2日目はどんな出会いが待っているのでしょうか。

まちの産業の担い手

一泊目の宿「ヨックル」を後にして向かったのは、下川フィードサービス。乳牛専用飼料の製造会社です。

飼料を製造して販売する会社だと思っていましたが、実はそうではありません。近隣の酪農家17軒と共同で飼料畑を管理し、収穫物を集積、TMR飼料(完全混合飼料)に加工し配送。そして飼料製造・販売だけではなく、育牛・育成牛預託管理部(おがりん)、生乳生産販売部(しぼりん)が稼働しています。

フィードサービス代表の松岡さんに、会社や業界の課題感をお聞きしました。「やっぱり担い手が少なくなっていることだね」と、松岡さん。ここでふと疑問が。

地元出身の若者が「地元から出ていきたい」という思いでまちの産業の担い手が減っているのか、まちの酪農や農業、林業などそれぞれの産業に対して就職という選択肢がないのか、どちらなんだろう?と。

「田舎だからこそ、見えてしまうんだよね。人口が少ないと、まちの大人との距離も近い。リアルな所得だとか休みの多さだとか、そういうものが大人から子どもへと伝わりやすいのかもね」と、まちで働くからこそ感じるものを教えてくれました。

たしかに、小さいまちは大人と子どもの距離が近い。大人が自分の仕事に誇りを持っているかどうか、その姿勢が子どもたちの職業観につながるのかもしれません。

さらに、松岡さんは「情報が届かないことも課題かな。まずどうやって来てもらうか、知ってもらうかというところからだね」と。

1日目に続き、”担い手”という課題に直面したわたしたち。どうしたらいいのだろうと頭を悩ませます。

町の小さな集落がつくる、バイオビレッジ構想

ここからは下川町の”一の橋”エリアに移動しての見学。

車を降りると、こんな近さに鹿が……!

かつて、一の橋地区には2000人ほどの住民が暮らし、林業を中心に栄えていました。ですが、林業の衰退から人口は150人にまで減少し、集落の存続危機にさらされたのです。

そこで町が打ち出したのが「バイオビレッジ構想」。エネルギー自給型の集住化がはじまりました。

町内で生産されたチップを用いた木質バイオマスボイラーは、地区の給湯と暖房をまかなっています。このバイオマスエネルギーを活用した施設の一つが、今回見学する「特用林産物栽培研究所」です。

案内された先には、4つの大きなビニールハウス。足を踏み入れると、湿度の高いあたたかい室内。ずらっと並んでいたのは、しいたけ。

町が運営するこのしいたけの栽培施設では、1日10-15人ほどの方が、365日作業をしているのだとか。間近でみることがなかなかない、しいたけの栽培環境に興味津々のわたしたち。

菌床から生えてきたばかりの小さなしいたけも、すっかり大きくなって肉厚なしいたけも、なんだか愛おしく思えてきました。

こんなに立派なしいたけが育つのも、バイオマスエネルギーの力。まちの林業の力が食卓に届く、そんな場所でした。

2日目のランチは、駅カフェイチノハシ。見学してきたばかりのしいたけをふんだんに使ったランチプレートです。

腕を振るうのは、大阪出身、パワフルさ全開の中谷さん。もっとお話したいと再会を誓い、お店をあとに。

次はスノーシューを履いて、冬のアクティビティ。下川町で川専門のガイドを行う”べえやん”に森を案内してもらいました。

もちろん、アクティビティ要素も盛りだくさんで童心に帰ったように楽しんで大満足。下川の自然を身体全体で感じる、贅沢なひとときとなりました。

わたしたちのもとに届く、下川の自然

2日目の最後の見学は、下川フォレストファミリー。森林組合から生まれた、木材加工メーカーです。

これまで、木の切り出しから製材までを見学してきた私たち。最終工程のひとつでもある、加工の現場にお邪魔しました。

下川フォレストファミリーは、構造用集成材、土台、内装用集成材、フローリング、家具にクラフトと、大きなものから手のひらサイズのものまで多岐にわたり製造しています。

下川町内にもフォレストファミリーが手がけたものがたくさん。図書室や町民会館、病院や小学校まで、暮らしながらまちの木の温もりを感じられるのです。

一枚一枚の個性を見極めながら、丁寧に製造を行っていました。木の板にある節を手作業で埋めるのは、まさに職人技。

「かわいい!」と思わず手を伸ばしたのは、おもちゃの部品。手触りも香りも色も、全てに魅了されてしまいます。「将来は、食器を全部つくってもらいたいね」「家の標識をつくってほしい!」と、すっかり下川町の木とフォレストファミリーに感動。

1日目に続き、盛りだくさんだった2日目。この日の宿は、五味温泉のお隣のエコハウス美桑でした。

エコハウス美桑は、環境省の「21世紀環境共生型住宅のモデル整備による建設促進事業」のひとつとしてつくられました。下川町の木で作られた家具や、ペレットボイラー、ペレットストーブ、ヒートポンプが設置されています。

木の温もりや、四方の自然の豊かさで、非日常的な空間。隣にある五味温泉も満喫し、素敵な夜となりました。

下川町の自然や暮らしを体感した2日目。少しずつ見えてきた、下川町でしか味わえないもの。最終日もまた、たくさんの出会いが待っていました。

文:谷郁果 写真:小室光大


3月15日-17日に開催された、しもかわ森林文化ミュージアム・くらしごとツアー。札幌圏の大学生5人が、林業や移住者、まちづくりや暮らしと仕事などそれぞれの視点で下川町に滞在しました。忘れられない景色や言葉、人に出会い、そして林業をはじめとする下川町の現状を知ったわたしたち。大学生5人のうちの一人でもあり、町内に祖父母が暮らす、北海道大学教育学部3年のわたし、谷郁果が、5回にわたりツアーの記録を連載していきます。